映画「メッセージ」を元理系院生がみると………
かれこれ何年振りってレベルです。
そろそろ本格的に何か始めようかと思って、
いきなり映画かよって感じですね笑
それはいいとして、
さっそく本題ですが、今日は2017年話題のSF映画「メッセージ」を観てきました。監督はドゥニ・ヴィルヌーヴさんです。
言語学者である主人公のルイーズがある日飛来したエイリアンに対してコンタクトを試み、相手の使う言語の解読を始めていきます。言語の解読を通じて根気強くエイリアンとの対話を深めていくルイーズですが、やっぱり途中で対話のドアを閉めちゃうやつがでてきて大変なことになります。そして、そのあとはどうなる!?みたいな感じです。
そして、この映画にはその大きな物語とは別に、ルイーズの中に起こる変化というものがあります。主人公ルイーズはエイリアンの言語の解読をしますが、そこでサピアウォーフの仮説というものが提示されます。これはざっくりいうと「話す言語で人の世界観は形作られる」ってやつです。ルイーズがエイリアンの言語を解読しそのエイリアンの世界観を取得するようになると・・・最後は誰もが予想できない結末に持って行かれます。
とまあ一般的なやつは置いておいて、
この「メッセージ」をVRを研究してたやつなりに観てみました。
まず第一に、
「なぜ普通にエイリアンが見えて、エイリアンの音を聞けるのか?」
という疑問を持つことになります。
当然ですが、人間の見える範囲(つまり可視光線)の範囲はそこまで広くありません。ましてや宇宙から飛来する宇宙線の波長は、可視光線よりもずっと波長が短く、人間の目には見えないのです。音に関しても同様ですね、超音波領域の方が圧倒的に広いわけですから。まあこの辺は人間のイメージしやすいようにという、映画制作サイドの話なんでしょうが。
第二に「人間の記憶と時の流れ」についてです。
主人公のルイーズはエイリアンの言語の取得を通して、未来が読める能力を手にすることになります。正確にいうと、未来の記憶を今呼び起こすことで未来を観てしまうのです。
しかし、ここで1つの疑問が起こります。未来の記憶を呼び起こすことは実際に可能なのか?ということです。
ではまず、記憶とはそもそもなんなのかというところから見ていきましょう。
まず記憶というのは、ある体験に紐づいた神経の発火パターンであると言えます。例えば、子供の頃にお母さんに抱き上げられた記憶というのは、
1.お母さんの表情等の刺激提示
2.刺激により、神経が発火(例えば神経2、500、80000のように)
3.複合的な神経の発火パターンとして保存
このようにして記憶は保存されています。では記憶を呼び起こすというのはどういうことなのでしょうか?
例えば、ある人が子供の頃にお母さんに抱き上げられた記憶を思い出す時というのは、
1.お母さんの表情を思い出そうとすることで神経が発火(神経2、500のように)
2.特定の神経の発火パターンを起こすことで、それに紐づいている神経も発火(神経80000のように)
こうして人の記憶は呼び起こされます。この説明では人が能動的に思い出すパターンを扱っていますが、テレビで子供が抱き上げられた映像を見ることでも同様の反応が起こったりします。
しかしこのように考えると、そもそも神経の発火パターンとして存在するはずのない未来の記憶を思い出すのは不可能なのです。
ではどのように未来の記憶を掘り起こしていたのか?
1つの解は予測モデル型ですね。本人の身体状態や周りの環境のパターンを過去におきた事象と比較し、起こりうる未来を予測するパターンです。膨大な情報処理を行うことができればおそらく可能でしょう。
とまあ色々ありましたがまとめると、いろんなことを考えさせられる映画です。
人はもっと対話を通して深遠なる人間の理解に努めなければいけないなと思いますし、言語で世界観が変わるという話はやはり人間は1つの殻に閉じこもっていてもダメなんだなと思わせてくれる映画だったり。
観ている最中もあれはなんなんだろう、観終わった後もポカーンみたいな。間違いなく良作です。